タイトル『夢見る明日』


夢見る明日

「“ 〜〜、眠れないよぅ〜〜〜!(涙)”ぽちっ」
―――メールを送信しました
「はあーーーっ、淋しいよぅ〜〜〜何で がここにいないのよ〜〜」
は少し膨れながら呟いた。

ここは が同棲しているマンションの一室。
今日は、2人で住むようになってから初めて が1人でお留守番をしている。
朝、 を送り出し、昼間は家事に買い物にと、いろんなヒマ潰しが出来た。
しかし夜になっても が帰って来ないことが を不安にさせ、お留守番なんだと認識させられる。
携帯が着信を報せる。 は即座に携帯を手に取りチェックをする。
今一番会いたい、恋人からのメールだった。


『どうしたんですか? いつもは3秒で眠ってしまう が眠れないなんて珍しいですね?』
「もぉーーー何で眠れないかわかるくせにぃ… のいぢわる…」

そう言って膨れた顔をさらに膨らませながら、メールの返信を打つ。

「“ふーんだ。どーせ珍しいですよぉーーだ。今日は が側にいなくて落ち着いて眠れないんだもん。
はそんなことないんでしょ?(-_-#)"ぽちっ」

『オレだって淋しいですよ。でも仕方ないでしょう? 今日は出張でオレは京都に来てるんですから。
明日には帰れますからそれまでイイコで待ってて下さいね、オレの可愛い
「“やだもん。明日までなんて待てないもん。イイコになんてできないもん。淋しくて泣いちゃうんだ
からっ。早く来ないと他の人にもメールしちゃうよ?"ぽちっ」

『困った子だなあ…。イイコにして待っててくれないなら、帰ったらお仕置きかな?』
「“やだやだ!お仕置きなんてやだっ!でも側にいないのもやなんだもん。"ぽちっ」

ガチャッ

「こらっ、わがままなお姫様?そんなことばかり言ってるとホントにお仕置きですよ?」

不意に聞こえた聞き覚えのある声に振り向くと、そこには愛しい恋人の姿があった。

っ!!」

は、勢いよく胸に飛び込んできた をしっかりと抱きとめ、優しく声をかけなが
ら抱き締める。

「ただいま、
「おかえりなさい、 !もう出張は終ったの?」
「えぇ。オレも1日 を抱き締められないだけですごく不安で、早く仕事を片付けて
帰って来ました」
「嬉しい!会いたかったよぉ、 ぁ〜〜」
「オレもですよ、

力強く、でも優しさと暖かさが感じられるその腕で の細い身体を抱き締め、互いにその感覚を
確かめるようにしばらく抱き合ったあと、 はそっと身体を離して の顔を覗きこみながら言った。

「で…オレのお姫様はイイコで待っていられたかな?」

  の頭を撫でながら、優しく質問をする

「イイコにしてたよv」
「本当? 散々わがまま言っててイイコだったんだ?」

頭を撫でられて嬉しそうに言う に、意地悪な質問をする。

「う゛っ(汗)だって淋しかったんだもん…」
「だからって他の人にメールするとか言うんだ?」
「そっ、それは…っ」

 さらに意地悪な質問で突っ込む に、 は言葉を詰まらせる。

「オレが本当にまだ京都にいたらどうするつもりだったんですか? 他の人に寝かせてもらうの?」
「そんなことしないもんっ!」

今までのメールで言ったことを数分にわたって説教を受ける羽目になってしまった
この説教も、 を想うからこそのヤキモチなのだが、少し意地悪もしたくなってしまう。
はだんだん言葉数が減り、頭はうつむいてくる。
そんな の様子を見て、 はため息をつく。

。悪い子はどうするの?」
「……………」

少しだけむくれたような顔で黙り込んでいる
は瞼を下ろし、短いため息をひとつ吐くと、小さな子供にするように軽く睨んで叱る。

「ったく…。めっ!」
「……ゴメンナサイ」

叱られて、まだ少しむくれたような音は残ってはいたものの、素直に謝る。

「オレはもう少し用事があるのでまた少し出掛けますけど、オレに心配させたことと怒らせたこと、ちゃんと反省してて下さいね」
「えっ!? 出掛けちゃうの!?」
「悪い子だった罰です。1日1人で反省してなさい」
「そんなぁ〜〜〜っ」
「行ってきます」

そう言って は悲しそうに叫ぶ に背を向け、本当に出掛けていってしまった。

「……………バカ…」

―――5分後―――

「ただいま」
!1日お出掛けじゃなかったの?」
「ふふっ、嘘ですよ。用事なんてありませんよ。 がちゃんと反省するように言っただけなんです」
「ひっどーーい! そんな嘘なんかつかなくたって反省してるのに」
「でも、本当に怒ってるんですよ。淋しいからって他の人にメールするなんて言うから。
これでオレを怒らせるとどうなるかわかりましたよね?」
「……うん…」
「少しは懲りて反省した?」
「………反省シマシタ…」
「くすっ、イイコだね。おいで、

そう言って両手を広げてにっこりいつもの優しい微笑みを向けた を見て、 の表情が明るくなる。

「にゃんっ♪」

元気に返事をして に飛びついてきた を抱き締める。

「くすくす…ワガママで甘えん坊で淋しがりで…困ったお姫様ですよね、ホントに」
「むぅ〜〜〜〜、そんな言い方しなくたって…」

少しだけ拗ねた表情をして見せる はそんな の頭を撫で、その手を頬へ滑らせる。

「でも、そうだから放っておけないんですよ。オレが側にいなかったら誰がこのお姫様の相手を
するんです? オレ以外の男になんか、 には指一本触れさせませんよ。 の相手はオレだけです」
「うんv  、だあいすきっvv」

言い終わると同時に、 に抱きつく。そんな を愛おしそうに見つめ、
抱きついて来た の肩を抱く。

「オレは“好き"じゃありません」
「えっ?」

そんな優しい行動のあとに、思いもよらない の一言に、 は目を丸くして身体を離し、
少しだけ不安の色を宿らせた瞳で を見つめて次の言葉を待つ。

「愛してます、 。何よりも、誰よりも愛しています」
…vv」

のくちびるに口づけ、それから を抱き締め、その胸に顔を埋める。
の暖かい胸に規則的な鼓動を感じていると、だんだん眠くなってきた。

「ふぁ…私も…あいしてるよ…くら…ふぁ…」
「くすっ、 ? 今日はもう寝ましょうか」
「ん…ねる…。 に抱き締めてもらってたら眠くなってきちゃった」
「わかりました。じゃあ今夜はもう寝ましょう。ずっと側にいますから、イイコでちゃんと寝ましょうね、
姫」

いつもの らしいセリフに、 は優しく微笑み、くちびるに軽くキスをする。

「うん、 が一緒ならすぐ眠れるよ。おやすみなさい、 …。本当にずっと離れないで側にいてね…」
「大丈夫。ずっと隣にいるから、安心しておやすみ」

そうして は優しく の頭を撫でてやる。
すると はくすぐったそうな、嬉しそうな顔をして甘えた声を出す。

「ね… ?」
「ん?」
「いつもの…して?」
「いいですよ」


ちゅっ


のくちびるが、とろんとした瞳で今にも寝入ってしまいそうな の額に口づけられる。

「ふふっ、しあわせv…おやすみな…ふぁ…ぁい…」

語尾があくびとも挨拶ともとれないようなものになり、すぐに規則正しい寝息に変わる。

「くすっ、寝顔はまるで天使だな…。さっき買ってきたケーキは起きてからのお楽しみだ
ね」

そう、さっき に嘘をついて出掛けた時に、近くのコンビニで は淋しい思いをさせたお詫びと
留守番のご褒美にと、 の大好きなショートケーキを買ってきていたのだ。


時計の針は既に午前一時を回っていた。

が眠くなるのも無理はないな。

そう思い、ダイニングのテーブルに置いておいたケーキを冷蔵庫にしまい、
の横に潜り込んだ。

「―――愛してるよ。世界でたったひとりのオレのお姫様…」


朝起きて、ケーキを見た の顔を想像して、 も眠りについた。

しばらく忙しかったけど、明日は休日。

楽しい日になりそうな予感です。


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