2.大好きなお兄ちゃん

じりりりりりりりりりり…

 目覚まし時計の音が頭の上で響く。

「うぅ〜〜〜…ん……」

ベッドにもぐったまま、手探りで目覚まし時計を探して鷲掴みにする。それでもうるさく鳴り止まない目覚ましを、
鞠依は思い切り壁にむかってぶん投げる。

ガンッ、ガショッ と情けない音を立てて壁にぶつかり、床に落ちて鳴り止む目覚まし時計。
そしてまた、眠りにつく鞠依…。



がばっ
「今日は期末テストだった〜〜〜!!! 遅刻したらやばいよぉ〜〜〜!」

 ベッドから飛び起きて、あわてて制服に着替えて、部屋を飛び出る。部屋を出ると、ダイニングキッチンがあり、
そこでお兄ちゃんがラフな格好で朝食を食べていた。

「おはよう、鞠依。日曜日なのに、制服を着てどこに行くんだい?」
「……え?」

お兄ちゃんの言葉に、一瞬固まる。

「え、今日って何日?」
「今日は15だよ」
「えぇ〜〜〜〜〜?! テスト、昨日で終わってるじゃん!!なぁ〜んだ、焦って損した〜〜。
また寝なおそう〜〜っと」

そういいながら急に今までの動きが嘘のように鈍る鞠依。

「鞠依。ちょっと待ちなさい」
「なあに? お兄ちゃん」

お兄ちゃんに呼ばれて、鞠依はとりあえず自分の席に座りながら尋ねる。

「昨日でテストが終わったってことは、明日から返ってくるはずだよね?」
「うん、だと思うけど…」
「いつものことだからわかるだろうけど、返ってきたら、ちゃんと見せるんだよ」
「う。そ、そのことなんだけどぉ…、今回はあまり自信がなくて…」

甘えるように上目遣いでもじもじと答える鞠依。
でも、お兄ちゃんはそんなことは気にした様子もなく、言葉を続ける。

「それは勉強不足だったからだろう? 最近、遊んでばかりであまり勉強していなかったのは知ってるよ。だから、
今回は赤点一つにつき、お小遣い3分の1減額だよ。いいね、鞠依」
「えぇぇ〜〜〜〜〜〜〜っ?!」
「えぇぇじゃない。赤点を取ってなければ減額にならないんだし。それとも、赤点確実な教科があるのかい?」
「う…。わ、わかんないけど…」

お兄ちゃんに突っ込まれて、思わず言葉に詰まってどもってしまう。

「ま、赤点がないことを祈るんだね。しっかり覚えておくために、テストが返ってきたら間違っていたところをちゃんと
教えてあげるよ。怖がらなくていいからね」

そうにっこり優しく言ってくれても、もしかしたらお小遣い減額があるかもしれないと思うと、
今から落ち込んじゃうよ〜〜〜〜(泣)

そんな私の心を見透かしたように、お兄ちゃんが口を開いた。

「あ、そうそう。これからちょっと出かけないか? 今日は天気もいいし、気分転換にはいいと思ってたんだけど、どうかな?」
「ほんと?! わぁ〜い! お兄ちゃんと出かけるのって久しぶりだね!」
「ああ。ここのところ、忙しくてあんまり構ってやれてなかったし、今日は好きなところに連れてってあげるよ」
「やったぁ! じゃあ早くいこっ!」
「こらこら、ちゃんと朝ごはん食べてからにしなさい。ここにあるんだから」
「あ、はぁ〜い」

そして、朝食を食べて着替えを済ませた私とお兄ちゃんは、さっそく出かけることにした。


今日は、市内に新しくできたケーキバイキングのお店に行くことにした。
今学校でも、すごく美味しくてきれいで、イケメンの店員さんが多いって評判のお店なんだ。女性店員さんの制服もかわいいって、
学校中の生徒が注目してるお店なの。鞠依も、ずっと行ってみたかったんだ♪
今日は食べまくるぞ〜〜〜〜〜〜〜♪

ケーキを心ゆくまで堪能した後は、近くの公園までお散歩。

公園に、アイスとクレープのお店も出てるの。そこでまたつまみ食い。
ふふふ、ケーキの後だけど、それとコレとは別腹なのだ♪

それからお兄ちゃんにおねだりして、ストロベリーアイスを買ってもらっちゃった♪

ここの公園のアイス、あんまり甘くなくて、さっぱりしてるんだよ。だから、甘いもののあとや、運動の後は最高なの!

そして、公園で少し休んだ後はお買い物。ここでも、お兄ちゃんにおねだりして、ワンピースを買ってもらって、最後に夕食を食べて、
家に戻るともう9時半。

「お兄ちゃん、ありがとう! すっごく楽しかったぁ〜〜♪」
「どういたしまして。またいい子にしてたら遊びに連れてってあげるからね」
「うん!」

そして、翌日の朝。

昨日と同様に目覚まし時計を壁に投げつけ、落ちたショックで鳴り止む目覚まし時計。
鞠依は、目覚まし時計の音が止まると、またベッドに潜り込んだ。

ちょっとしてから、お兄ちゃんが部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「鞠依、起きなさい。学校に遅刻するよ。鞠依」

ドアの向こうから呼びかけても返事がない。お兄ちゃんは鞠依の部屋のドアを開けて、ベッドまで来る。
そして、布団を勢いよくめくって、起こしにかかる。

「鞠依! もう起きないと遅刻するぞ。それとも、俺が着替えさせないと起きれないのかな?」
「うぅ〜〜、寒いよぅ…。今日は具合悪いからお休みする〜〜〜」
「そうか、わかった。じゃあ今日は病院に行かないといけないね。ちゃんとお医者さんに診てもらって、必要だったら注射もしてもらって、
薬も飲まなくちゃね。そうと決まれば、これから病院に行くから早く着替えなさい。俺もついていくから」
「さ〜て、今日も元気に学校へ行こう!」
「あれ? 具合悪いんじゃなかったのかい?」
「も、もう治った!」
「そう? じゃあ早く着替えなさい。もうすぐ8時だよ」
「えぇっ?! なんでもっと早く起こしてくれないのよぅ〜〜〜!! 遅刻しちゃうじゃない!」
「目覚まし時計で起きない鞠依が悪い」
「あ〜〜ん、もう遅刻できないのにぃ〜〜〜!」
「頑張って着替えなさい。俺も、もうすぐ出るからね。準備できたら行くぞ」
「はぁ〜〜〜い」

鞠依は、返事すると同時にパジャマを脱ぎ、制服に着替える。猛スピードで着替えを終わらせ、パンを口に詰めこんで、牛乳で流し込む。

「ぷはっ、お兄ちゃん、準備できた!」
「よし、じゃあ行くぞ」
「うん!」

苦笑しながら鞠依の頭を撫でてくれるお兄ちゃん。

鞠依は、元気に返事をして家を出たの。