お兄ちゃんの彼女

 

 

「お兄ちゃんなんて大っ嫌い!!」

そう言って家を飛び出したのは、妹の鞠依。

「鞠依! 待ちなさい!!」

 

 

 

 

11月も終わりに近づいた、寒い朝。今日は日曜日で、人と会う約束をしていたため、間に合うように朝食を作り、
鞠依を起こして朝食を食べていた。

「鞠依、今日はちょっと出掛けてくるよ。夕方前には帰ってくるから、いい子にしてるんだよ。出かけるときは一言書いて
出かけてくれれば、それでいいから」
「うん、わかった。気をつけてね、お兄ちゃん」

食べ終わった食器を片付けながらいうオレに、鞠依は良い子のお返事をする。

「ありがとう。じゃあオレはそろそろ出かけるからね。いってきます」

そう言ってオレは家を出た。


待ち合わせ場所に着いたオレは、既に来ていた彼女…ぼたんを見つけ、声をかけた。

「やぁ、待ったかい?」
「ううん、あたしも今来たところだよ」
「よかった。じゃあ行こうか」

そう言ってオレ達は歩き出した。

「うん。こうして蔵馬と会うのも、ひさびさだねぇ」
「そうですね。でも、くれぐれも妹の前では蔵馬なんて言わないでくださいね。妹は知らないんですから」
「わかってるよ。心配性なんだからぁ」

そう言いながら軽くオレの肩を叩くぼたん。

「ぼたんですから…って言ったらどうします?」
「ひっどぉーーーーい! あたしはそんなに口は軽くないよ!」
「そうですか?」
「もぅ! 蔵馬ったら!」

からかい口調で言うオレの言葉に、ぼたんは顔を赤くして膨れたような顔をする。

「あはははは」
「笑わないでってば!」

その仕草がおかしくて笑うオレの背中にぼたんの平手が飛んできて、転びそうになるオレをみて、ぼたんが慌てる。
そしてまた笑いながら、なんてね なんて言ってると、更に顔を赤くして膨れ、今度は腕をつねられた。

「いてて、ごめん、ごめん」
「もぅ! 人で遊ぶのもいい加減にしてほしいよっ」

膨れっ面のまま腕組をしてそっぽを向くぼたん。

「ごめん、悪ふざけがすぎました。そんなに怒らないでください。せっかくオシャレしてかわいくなったのに、そんな顔をしてるともったいないですよ。
せっかく久々に会えたんですから、楽しく過ごしましょう?」
「……うん」

膨れっ面が元に戻り、今度は違う赤に顔を染めて照れながら答える。

今日は楽しい日になりそうだ。

 

 


〜鞠依Side〜



お兄ちゃんが出かけて一人になった鞠依は、一人で家にいたってつまんないと思って出かける事にした。
着替えを済ませて、お兄ちゃんに言われたとおり書き置きを残して玄関を出た。

街へ出て歩いていると、お兄ちゃんを見かけた。

「お兄ちゃ…」

声をかけようとすると、お店の中から知らない女の人が出てきて、お兄ちゃんと楽しそうに歩いて行った。

 

 

誰…あの人…。

 

 

自分の中から、よくわからない感情がこみ上げてくる。
なんだか胸がムカムカする。


オニイチャンカラ ハナレテ…

 

イヤ…ソンナニ タノシソウニ シナイデ…

 

鞠依は、ふたりが歩いて行ったのとは逆方向に走って行った。